○映画系コラム01 

日本沈没 (2006年製作)

小松左京原作の同名小説の映画のリメイクで、過去には1973年に映画化され、のちにTVドラマ、ラジオドラマ化と
今でいうメディアミックスの先駆けともいえるほどに成長した大型作品。
当時は「ノストラダムスの大予言」などの世紀末ブームの最中で、時代背景には高度成長期の停滞に石油ショックと不安要素もありさらに恐怖感が増した。

今回のリメイクは前年「ローレライ」で監督デビューを果たした
樋口真嗣。
アニメ・実写の両刀使いである彼が手掛ける「日本沈没」とは!?






樋口真嗣監督とは?

GAINAXとGONZOの設立に参加し、庵野秀明監督の親友でもある。
彼の右腕として「トップをねらえ!」や「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」で成果を上げて
実写では1984年の「ゴジラ」(リメイク)からはじまり、1995年からの平成ガメラシリーズで特技監督に昇格し、
2005年には福井晴敏原作の「ローレライ」で念願の監督へと昇格。

「ふしぎの海のナディア」では契約で海外外注となってしまった「南の島編」パートの監督に就く。
「さよなら…ノーチラス号」「裏切りのエレクトラ」とカタルシスな話の後にハチャメチャで無理な展開
(ジャンとナディアのサバイバルやハンソンが作ったメカのキングとの競争など)に困惑したと思うが、
ガーゴイルの再活動とそれを阻止する為に復活したノーチラス号のクルーとの対決を描いた終盤までの橋渡しを果たす。

「新世紀エヴァンゲリオン」では第八話「アスカ、来日」からはじまるアクション編の演出と絵コンテで
アニメで実写っぽく見せる斬新な映像を生み出すなどが好評。




ストーリー


国際海洋開発センター所属の小野寺(草なぎ剛)が駿河湾で発生した地震に巻き込まれ、そこにスーパーレスキュー隊である
阿部玲子が(柴咲コウ)共に被災していた美咲と共に救出するところからスタートする。
のちに田所博士(豊川悦司)がすでに発表されている日本の沈没期間よりもさらに早い338.56日と算出。
それを閣僚たちが集まる会議の中で警告するも、官房長官はそれを聞き入れず、逆に嘘の報告を国民に宣言してしまう。

日本国民脱出の際に受入を交渉する為に中国を飛んだ首相の山本(石坂浩ニ)が
阿蘇山の大爆発に巻き込まれて政府専用機が墜落して死去。
自己中心的な官房長官もアメリカへ飛び、日本は危機管理大臣である鷹森(大地真央)に任される事に。


「絶える事が無い地震と津波を回避する為には大平洋プレートを破壊する以外に無い」という田所の回答に
元妻である鷹森は全世界から削掘船を調達し、N2爆薬で連鎖爆発を仕掛けるプロジェクトを敢行。

しかし、地方の主要都市は壊滅し、ついに東京も都市機能を停止。
国際海洋開発センターのチームを解任された小野寺も廃墟やキャンプでさまよう中、玲子や街の仲間との中で
「人を救う為に自分が出来る事」を見つけ、潜水艇わだつみ6500と共に先に立たれた結城の任務を引き継ぐ事を決意。

果たして日本の未来は守れるのか…


総評

日本の沈没をメインに描きながらも小野寺と玲子との恋愛ドラマも兼ねているのだが、
どうも小野寺の印象が薄い感じがするのは気のせいだろうか?
草なぎ剛が小野寺役としてはミスマッチなのか、はたまた玲子役の柴咲コウが印象が強いせいか。
ちなみに、この玲子役の為に自動二輪の免許を取得したりレスキュー隊の訓練を続けたりするなど柴咲コウはけっこう努力家のようです。
あと一番残念なのが小野寺と玲子が惹かれていく様があまりにも少なかった事。
時間的に制約がある劇場用作品なので仕方が無いのかもしれませんが、もう少しシーンが増えてくれればなぁ。


私はどちらかと言えば、田所博士と鷹森が光って見えた。
田所博士はパソコンを破壊したり、閣僚を交えた会議では大臣たちに無礼な発言をしたり、職種とは正反対に荒っぽい所があるなど
自分や外部との葛藤と向き合って戦っている。

鷹森は中国を経つ前に首相から危機管理大臣の役職を託されるも、官房長官などの圧力に苦しみ、役職を生かされなかった。
元夫である田所の所を訪ねて、日本沈没を阻止するアイディアを採用してからはメキメキと風格を現していく。
そんな中で削掘艇を全世界から調達するシーンでは一瞬だが一人の女性に戻る場面もあったのが印象に残っている。
ホントにこんなカッコイイ女性は魅力がありますね。

また、大切人を守る為にも自己犠牲もありうるというのは「ポセイドンアドベンチャー」や「アルマゲドン」などの
パニック映画の定番パターンながらもハッピーエンドが多い邦画の中で、それを扱ったのはかなり評価しています。


自衛隊の全面協力でヘリや艦艇、エアークッション艇を惜し気も無く撮影で使用出来たおかげで
パニック映画としてのリアリティを引き締まる道具に十分なれたと思う。
国際海洋センターも、しんかい2000をわだつみ2000として地中に沈める直前まで撮影に貸しているなど負けじと頑張っていた。

CGもさすがにハリウッドには負けるものの、地割れに吸い込まれる車や阿蘇山での大爆発、降りしきる火山灰の合成などは
邦画の中ではトップクラスの出来だと断言してもいいくらい。本当に頑張っています。
是非ともこのクオリティを設備が整ったシネコンあたりで1800円払って観に行ってください。




小道具としてのMac製品

 

はじめに目についたのがとにかくMac製品が多い事。
危機管理センターや会議で使われたノートパソコンは全てPower Book G4らしいものがあり、
富士山観測所にはPower Mac G5が使われていた。

さらにインパクトがあったのが序盤で田所博士が日本の沈没シュミレーションで338.56日という計算を算出した時、

「こんちくしょーーーーーっ!!!」とパソコンをパンチで破壊するシーンがあるのですが、


そのパソコンがDELLだった(笑


ああ、樋口監督ってたぶんMacユーザーなんだなぁ、と実感する場面でしたね。
皮肉としてはいちばん効果的だったのかもしれません。

結城が家族のムービーを観ていた時に使っていたPCもiMacでした。


小ネタとか


・大平洋プレートを破壊する際に使われたN2爆薬の元ネタは「新世紀エヴァンゲリオン」から。
 第拾九話「男の戦い」で綾波レイがゼルエルに対抗する手段として、N2爆弾を抱えて特攻していくシーンがあります。


・京都の寺では国宝を自衛隊のトラックが運び出す時に、おじぎをするお坊さんの中に富野由悠季監督が出演!!
 また、小野寺の実家のシーンでは小説家の福井晴敏さんも和久井映見と共に出演。
 酒蔵で和久井映見といえば「夏子の酒」を連想するあたり、これも上手いサービスだ。


・終盤で小野寺が「わだつみ2000の全エネルギーをマニュピレータ−に廻してくれ」と田所に説得する場面で、
 「奇跡は起きます!起こして見せます!!」と「トップをねらえ!」で使われた同セリフを使用していた。
 これは判る人ならニヤリとするはず。私もニヤリとしましたもの(笑